拙編著『社会的包摂/排除の人類学』が朝日新聞読書欄で紹介されました

今回の記事では、日本に定住している難民の日常生活に焦点をあてた章について言及していただきました。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12045853.html

シリア難民の流入でヨーロッパが大きく揺れ動いてることなどを受けて難民問題に注目が集まっています。UNHCRによれば、2014年末の時点で全世界で5,950万人が避難を余儀なくされています。このうちUNHCRの支援対象となっている難民は、過去20年間で最大の1,440万人となっています。「難民」として支援の対象となることは、こうした人びとの困難が終わることを必ずしも意味しません。むしろ彼らは、庇護国においてまた別の困難に立ち向かわざるを得ない状況にあります。

本書では、様々なタイプの「他者」が生かされる/生きるさまざまな場に焦点をあてています。具体的には難民キャンプ・先住民定住地・開発モデル地域・障害者福祉施設・児童福祉施設などの現場です。これらの現場は、これまで国家による公権力が貫徹した空間であると考えられてきましたが、新自由主義的な政策展開の中で国家の役割が民営化されたり、個人の「自己決定」が尊重されたりするなかで脱領域化するとともに、そのありかたを大きく変えつつあります。しかしながら、それらの空間において人びとが公権力や市場と切結びながらおこなっている、生きる場を創るための営みを比較検討してみると、それぞれの状況における困難は驚くほど似通っていました。開発・難民支援・福祉という、一見すると異なる領域のなかに、現代社会の中で困難を抱えた人間として生きていく/そうした人びととともに暮らすためにおこなわれている諸実践を検討し、その特性を見出そうとしています。

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